20201218_読書感想文 根本敬「真理先生」

1章は、一つのテーマを「ぽん」と上空に放り投げ、風まかせにふらふらと、あちらこちらの界隈の話や自身に起きた出来事と、頭の中を巡ったよしなしごとに言及しつつ、最後にはきっちり着地するような、そんなイメージ。穂村弘のエッセイにも同じ感覚を覚えたけれど、「書く側の人」がうっかり真似をすると、すべりまくって、とっても恥ずかしい思いをしそうなリスキーみを感じる。

 2章の小説が、また面白い。内容も当然ながら、構成も含め。

 物語で語られる人物の半生について、本人からそれを聞いたという人物が語り部となり、読者の耳に徹する主人公に語ってきかせる形式が、現在絶賛格闘中の、プラトンの「饗宴」を彷彿とさせる。そして、物語冒頭でざっくりと全体の骨子を見せた上で本編に導入する手法は、昨今の「読まれやすい」とされるブログの書き方を彷彿とさせ、最後は落語のようなオチで締めるという、様々な時代の文章の手法がミックスされた書かれ方なのだ。これは、「書く人」には是非一読をおすすめしたい。

 3章は、氏が見聞きし思った事象に対し、彼なりの見解を述べるようなものとなっている。これがまた軽妙な言葉を使いながら、濃厚な味わいが出されていて、書き手の端くれとしては、若干の嫉妬を覚えた。

 濃い。とにかく濃い。193P程度、物の数ではないとタカをくくって読み始めたが、背脂のギッシリ浮いたラーメンを、替え玉2玉計3玉食べたような充実感だ。しかもこのラーメン、導入の一口目があっさりしているのがまた曲者だ。

 世に書籍は数多あれど、再読に耐え得るものはとても少ない。この本は、数少ない再読可能な一冊だ。こういう本に、中学生時代に出会いたかった。

 まぁ、14歳なんですけどね。

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