6×6 (Six times Six)

ファインダーの中の女の捜索は、開始30秒であっけなく終了した。
野宮に、『彼女』に出くわした状況を説明する為、学科教室でヤシカのファインダーを二人で覗いたところ、果たしてそこに『彼女』は映っていた。

「あまりに簡単に見つかってしまうと、有り難みに欠けるな」
「お前の有り難みの所在など知るか。で、どう思う?」
「確かにこれは妄想幻覚の類ではないようだな。しかしこれは……」

野宮はヤシカのファインダーとレンズの先の風景を交互に見て唸る。
明らかに無人の風景。しかしファインダーには、切り取られた風景と共に、彼女が映っていた。どこにフレーミングしても、必ず。ただし、空や屋上からの遠景のようなシチュエーションでは映らなかった。あくまで、人が存在し得る風景の中においては、僕のヤシカには必ず彼女が映っていた。

「撮影はしたのか?」
「ああ。フィルムには写っていなかったよ」
「この手の存在は、目には見えずとも写真には写るというのがセオリーなのだが……」
「そのセオリーとやらはわからんが……どうする?」
「キミはバカか?  コンタクトするしかあるまい」
「どうやって?」
「わからんが、まぁともかく彼女のいる場所、ファインダーに映る風景に入ってみるしかあるまい。まずは言い出しっぺの私が行ってみよう」

即断即決。そして即行動。
いいぞ野宮、僕が女なら惚れていたことだろう。

「どうだ?」

開け放たれた教室のドアの前、ノースリーブのフーデッドパーカーとホットパンツ姿の野宮が、長い手脚を駆使して様々なポーズを取る。その横には例の女。
しかし、視線が絡むどころか、彼女の瞳が野宮を捉えることすらなかった。野宮もまた、ファインダー越しには見えていた彼女の姿を捉えられずにいた。

「だめみたいだな。野宮、彼女は見えるか?」
「いや、全く。少々安易だったかな。戸川、今度はキミが立ってみろ」

へいへい、と、僕は野宮と入れ替わりに同じようにドアの前に立つ。一瞬、ふらりと目眩がした。暑さのせいだろう。
顰めた目を、ゆっくりと開くと、大きな眼鏡の奥の、ビックリしたような瞳が僕を捉えた。

「あ……ど、どうも」

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